有害有毒赤潮の生物学(5)

摘要

沿岸内湾水域において，植物プランクトンの多くの種は顕著な季節的消長を示し，水柱から一時的に完全に姿を消してしまうこともまれではない~(1,2)。このような植物プランクトン種は，水柱で浮遊生活をおくっていない時期には，シスF (cyst)，アキネート（ak in e te) ,休眠細胞（r es tin g c ell）, 休眠胞子(resting spore)等の耐久細胞の状態で海底に存在している場合が多い。耐久細胞は環境の変化に対して高い耐性をつので，栄養細胞(v egetativ e cells）の生理的耐性の範囲を超える環境条件下でも生存可能である。したがってシストなどの耐久細胞を形成できることは，水域における植物プランクトン種の継続的な生存生息のために有利な能力といえる。シストなどは，水柱の栄養細胞個体群のseed populationとしての役割をはたすので，その生理生態を知ることは，栄養細胞個体群の初期発生過程を明らかにするうえで大変重要である~(3～7)。