低温アンモニア分解膜反応器による 高純度水素の製造

摘要

多種多様な原料(炭化水素，水など）から製 造可能であり，かつ燃焼時に水のみを排出す る水素は，環境負荷低減の観点から注目され ている.しかし，水素を貯蔵?輸送する場合, 圧縮水素では体積水素密度が低いため，貯 蔵?輸送量が小さいこと，液化水素では極低 温（一253°C)が液化に必要な条件となるため， 高コス卜になることが懸念されている. 一方，メチルシクロヘキサン(MCH)やアン モニア(NH_3)といった水素化物は，常温?常 圧あるいは常温·0.8 MPa程度で容易に液化 が可能であり，特にNH_3は質量水素密度 (17.7 wt%)や体積.水素密度（107 kg-H_2/m~3)が 高く，カーボンフリーであるため，水素の貯 蔵?輸送媒体(水素キヤリァ）の有力候補とい える. 2012年時点でNH_3は，世界におい て年間1億6500万トン生産されており，そ のほとhどが尿素·硫安·燐安などの化学肥 料の原料や，硝酸.アクリロ ニトリルなどの 基礎化成品の原料として用いられている このように化学肥料や基礎化成品の原料とし て用いられているNH_3を，さらにエネル ギ一として利用するならば，世界における需 給バランスを考慮に入れる必要がある.また, NH_3は特有の刺激臭を有する毒性の強い気体 であり，AOGIH(米国産業衛生専門家会讓）が定めた労働衛生上の許容濃度（作業環境基 準）は25 ppm,悪臭防止法による大気中の許 容限度は1?5ppmの範囲内と定められて おり，使用にあたっては十分留意すべきで ある.