水に浮く軽量金属-摩擦撹拌接合(FSW)を利用した作製法-

摘要

図1をご覧いただきたい.今回紹介する方法で作製した多孔質（ポーラス）アルミニウムであるが，水に浮くほど軽量である.このポーラスアルミニウムは，軽量性の他，エネルギー吸収性や吸音性にも優れており，自動車部材へ適用すると，燃費，衝突安全性，防音性の向上といった要求を同時に満たすことが可能である.今後，さらに広範囲の工業分野での活用が期待されている.著者らは，ポーラスアルミニウムの新たな作製法として，摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding，以下FSWと記す）を利用した方法を開発した.FSWは，高速回転させたツールをアルミニウム中に押込み?走査させ，摩擦熱により軟化した領域を塑性流動により撹拌接合させる技術である.本稿では，このFSWによる強力な塑性流動を，ポーラスアルミニウムの気孔の核となる発泡剤や材料内の含有ガスを材料内に均一に撹拌?混合させることに用いる作製法を摩擦撹拌法と呼ぶ.また，FSW時のツール走査中に生じる摩擦熱と加圧力を利用して，気孔を形成するスペーサーを含む粉末を焼結させた後，スペーサーを溶解する作製法を摩擦粉末焼結法と呼ぶ.これらの方法は，FSWの単純プロセス.高速プロセス?高エネルギー効率といった優れた特長をポーラスアルミニウムの作製に利用するものであり，ポーラスアルミニウムの生産性や経済性の向上に寄与すると期待される.