低環境負荷型発光性シリコンナノ粒子の開発

摘要

1.はじめに近年,数十nm以下に制御された半導体ナノ粒子は,太陽電池の光吸収材料,光電子デバイス用発光材料,服飾用蛍光材料,蛍光塗料など種々の分野で利用されつつある.中でも,生体医療分野において,可視領域で発光する半導体ナノ粒子を生体内の状況診断として利用する技術が検討されている.この技術は,癌細胞と正常細胞の識別,癌細胞の拡散による転移?進行状況の標識,細胞内での異なる遺伝子?タンパク質の動態観察,薬物を病変部位(臓器,組織,細胞)だけに選択的に運搬するドラッグターゲティングの位置検出などさまざまな用途での使用を視野に入れ研究されている.しかしながら,生体医療用材料として,これまでに開発されてきた半導体ナノ粒子は,資源が希少で,かつ高価な元素が使用されており,地球環境や人体に対して有害な重金属元素(カドミウム)を含hだ材料が用いられている.そのため,そのような半導体ナノ粒子の多くは細胞や動物などの実験レベルでの利用に留まっており,臨床応用までに発展させるには多くの解決すべき課題がある状況となっている.