近接場光学顕微鏡による単一高分子鎖の延伸過程の直接観察

摘要

高分子材料は特徴的な力学的物性を示し，日常のさまざまな場面で利用されている．ゴム弾性などの高分子特有の諸物性は，高分子化合物が鎖状の巨大分子であり大きな内部自由度を有することに由来している．そのため，系の中で高分子鎖がどのような形態をとっているのか，またそれが時間的にどのように変化しているのかを知ることが高分子の物性を理解する上で重要であり，1本の高分子鎖のすがたを直接的に観測することが可能となれば，高分子材料の物性を研究する上で重要な情報となるものと考えられる．これまで高分子鎖のコンホメーションの評価は主に中性子散乱法によって精力的に行われてきたが1～3），従来の手法では多数の高分子鎖についての平均的な振る舞いに関する情報しか得られず，個々の鎖の形態について直接的に評価することは不可能であった．