脂質平面膜とパッチクランプのハイブリッドとしての CBB (接触液胞2重膜)法

摘要

生体膜は流動性を持ち,モザイク状である.このダイナミックで不均一な膜の上で,膜蛋白質は孤立して機能しているだけでなく,離合集散することもある.このような複雑系をどうとらえるか.生体膜の複雑性 (リン脂質の不均一?非対称分布)をそのまま扱うのではなく,限られたリン脂質組成と精製膜蛋白質で膜をっくる再構成法は,単純な膜から複雑な膜へ段階的にアプローチできる有効な方法である.このことでより詳細な物理化学的研究ができる.再構成法では様々な工夫がされてきた.リポソームに始まり,多様な手法の中で一線を画すのが脂質平面膜法(あるいは free standing bilayer法)である.リポソームやナノディスクと異なるのは「たった一枚の膜での測定」という点である.膨大な数の孤立した膜にともなう不均一性を考慮する必要がない.膜の両側の水溶液コンパートメントがオープンになっているため,電極のアクセスが可能であり,自由に膜電位を負荷することができる.この点、,支持膜 (supported membrane;とも異なる.膜電位(膜電場として10~7Volt/meter)を持たない生体膜はないので,膜電位を負荷することができることは膜蛋白質研究にとって必要不可欠である.