マイクロPIXE分析のアスベストによる疾病の診断への応用

摘要

1930年代以降、主に軽イオンビームを用いた原子核の励起状態や、新しい不安定核の生成崩壊の研究を目的とし、加速電圧が数MVの静電加速器が多数建設された。しかし、これらの研究分野が進むにつれて必要とされるイオンビームのエネルギーは更に大きくなり、1970年代には小型のバンデグラーフ加速器のような静電加速器はエネルギーが低すぎて利用されなくなった。そこで、数MeVエネルギーの軽イオンが物質との様々な相互作用を行うという特徴に着目し、核物理の実験では原子核反応分光におけるスペクトルのバックグラウンドとして邪魔者とされてきたこれら二次放射線を積極的に活用し、物質の分析に利用されるようになった。更に、放射線測定機器の進歩もあって、1960年頃から非破壊分析の手法としてこれらの加速器を用いて、イオンビームを用いた分析が盛hに行われるようになった。これらの分析法のうち、イオンが原子の内殻電子を励起することによって発生する特性X線を測定することで元素分析する方法を、PIXE(Particle Induced X-rayEmission)分析法あるいは単にPIXE法と呼び、現在、医学、薬学、生物学、環境科学などの分野で、高感度微量元素分析法として、活用されている。