先行研究の評価一STAP細胞問題を契機に考えさせられたこと一

摘要

理化学研究所（理研）の発生?再生科学総合研究センター（CDB）の小保方晴子氏を第一著者とするSTAP細胞に関する論文2篇のNature誌発表の衝撃的な報道から半年，データ捏造が発覚し，Nature誌も掲載を取り消した．理研は「STAP細胞は存在する」と主張し続ける小保方氏も加えた検証チームを発足させた．STAP細胞問題は，莫大な国費の投じられる先端科学研究の背後に産学官の癒着や科学研究における多くの根源的問題が存在することを露呈した．改革委員会は，理研の不公正人事や杜撰な研究データの記録?管理の実態を批判し，構造的欠陥のあるCDBは早急に解体すべきだと勧告した．議論は出尽くし，問題の所在も明白だが，断罪されるべき研究者達はその後も擁護され，関係者達の倫理観の欠如には憤るばかりだ．