職業性ストレスと企業の雇用管理

摘要

本稿では日本における企業労働者の精神疾患の総体と時系列変化の調査解明，メンタルヘルス問題の深刻化と経済構造および雇用管理の関係について調査データを使用して実証分析した。 その結果つぎの諸点が明らかとなった。 ①先行研究では未解明であった民間企業労働者の精神疾患の総体を，「健保組合」の調査を基に時系列で提示，その結果，1978年?以降今日まで増加傾向にあること，特に1995年以降はそれまでに比べ急増していることが判明した。 ②増加要因として，産業の技術集約化やサービス化などの構造変化が関係していること，③さらにバブル崩壊後の長期不況の下での人員削減などによる過重労働や雇用不安など雇用管理の変化が，労働者のストレスに影響していることを職業性ストレスモデルを援用した実証分析で解明した。 ④改善のための政策方向として，労働者の労働意欲を高め同時にストレスを軽減させる雇用管理のファクターを実証データから抽出して提示した。