「横わり」学問の復権を目指して：21世紀の制御理論とその応用

摘要

未来は過去に支配される部分と過去とはまったく独立な部分とからなることは,ダイナミカルシステム理論の助けを借りるまでもなくわれわれは経験から知っている。 予測理論では後者は「イノベーション」とよび，手を触れることのできないやむをえない誤差として処理する。 予測が未来を語ることができるのは，過去が未来を支配する範囲内だけである。したがって予測とはつまるところ過去を語ることにほかならない。 したがって，予測で大切なことは，過去にどのような問題が提起され，それがどのような形で解かれたか，あるいは解かれなかったか，解かれなかったとすればそれはどのような形で将来に持ち越されているかということである。 このような視点から制御理論について20世紀と21世紀の橋わたしを考えてみたい。20世紀の制御を語るときに忘れてはならないのがサイバネティックスとオートメーションである。 サイバネティックスは動物と機械の両方に共通する制御の原理をベースに提唱された新しい学問で，制御工学が工学を超える普遍性をもつことを明らかにした。 一方オートメーションは制御が産業の形態を変え，それを通して社会に大きなインパクトを与える技術であることを示した。 どちらも第二次大戦後相前後して登場した新しい言葉で,現在の「IT」に匹敵する当時の最先端のトレンドを表現していた。 この2つのキーワードが人口に胎灸した1950年前後は「制御の時代」であったといえる.この2つの言葉で示される制御の普遍性と社会性は21世紀においても変わらないと思う.