マイクロデバイスを用いた神経軸索からの活動計測と薬理刺激手法の開発

摘要

著者は，博士課程まで東京大学大学院新領域創成科学研究科に在籍し，マイクロ加工技術により作製したデバイスを用いて，培養した神経細胞のネットワーク構造の制御や活動計測に関する研究を行った．研究対象としては，マウスやラットから採取した神経細胞に加えて，ヒトやマウス誘導多能性幹（induced pluripotent stem；iPS）細胞から分化誘導した神経細胞も用いてきた．研究から，微小なトンネル構造を用いることで，培養神経細胞の軸索を伝導する活動を計測できること，異種の神経ネットワークがトンネル構造を介して結合を形成すること，およびトンネル構造により計測対象である軸索を電極上に維持することでヒトiPS細胞由来の神経細胞の活動を1年以上にわたって計測できることを示した．以上のように，ネットワークの構造制御や活動計測においては利点があるトンネル構造であるが，構造が軸索の周囲を覆うため，軸索に対して薬剤を作用させることができないという欠点があった．