放射光によるSiO2ガラスの構造と物性の高圧下その場観察

摘要

ガラスの高圧下における物性や構造については，材料科学·固体物理学的興味から数多くの研究がなされている．最近では，結晶がポリモルフィズムを示すのと同様に，ガラスや液体といった非晶質もポリアモルフィズムを呈するという考え方が提唱されている．つまり，液体やガラスにも“相”があり，圧力．温度によって“相転移”が起こるという考え方である．この考え方は，水の熱力学的異常（例えば4°C密度極大）を説明するために発展し，現在では他のさまざまな系についても適用されつつある．SiO2は地球マントルを構成するケイ酸塩の端成分であり，SiO2ガラスはその液体（マグマ）の振る舞いを模擬するものと考えられることから，地球科学的興味からも研究が進められており，高圧挙動が最もよく調べられたガラスのうちの1つである．筆者らは，放射光を用いた高圧下その場観察技術の開発により，その“相転移”を明らかにしようと試みてきた．筆者らの行った測定の概要とSiO2ガラスの高圧挙動について，これまでに明らかになっていることについて紹介したい．