歯に貼付するだけでエナメル質を修復·保存できるフレキシブルアパタイトシートの開発

摘要

エナメル質は身体の中で最も硬い組織で，約96％がセラミックスであるハイドロキシアパタイト（Ca10（PO4）6（OH）2；以下HApと記す）でできている．このエナメル質を形成するエナメル芽細胞は，歯の萌出時にはすでに存在しないため，一度欠損すると失われたエナメル質は二度と再生することはない．エナメル質は酸により溶解（脱灰）し，虫歯菌の酸による脱灰は「う蝕」としてよく知られている．この「う蝕」以外に，近年は食生活の変化により酸性の強い飲食物を習慣的に摂取する傾向にあるため，エナメル質が飲食物の酸により脱灰されてしまう「酸蝕」が間置となっている．また，超高齢社会になった現在，磨耗や校耗によるエナメル質の欠損やエナメルクラックも大きな問題となっており，前述の「酸蝕」およびこの「摩耗」，「瞭耗」による歯の欠損（ToothWearと呼ばれる）から歯を修復·保存する技術の開発が喫緊の課題であるが，その技術は未だ確立されていない．