アルミニウム合金ダイカストの表面近傍に内在させたアルミナ薄片の表面弾性波計測

摘要

アルミニウム合金ダイカストは複雑な三次元形状製品を高い精度で製造できることから様々な分野で利用されているが，人命に関わる部品では高い安全性が要求される．これにもかかわらず，ダイカスト製品には完全に除去することができない欠陥が内在しており，外力を受けた場合，これらの欠陥からき裂などが進展して，破壊の原因となり得る．特に，ダイカスト製品の表面近傍に存在する鋳造欠陥は深い位置に存在する欠陥に比べ，強度を著しく低下させる．前報では，表面近傍に気泡等の空隙が存在する場合を想定し，直径及び深さの異なる人工穴を導入した試験片を製作して表面弾性波（SAW）による測定を行った．その結果，直径0．5mm以上の人工穴が0．5mm以内の深さに存在する場合，検出可能であることを明らかにした．ところで，ダイカスト製品の機械的性質を大きく低下させる要因として，破断チル層の存在がある．アハメドと加藤は，アルミニウム合金ダイカスト材中に存在する破断チル層が試験片表面近傍に存在する場合，破断チル層の有する酸化膜を起点として容易に破壊を生じることを報告している．このため，表面近傍に存在する破断チル層を非破壊的に検出できれば，アルミニウム合金ダイカストの品質向上に大きく貢献するものと期待される．