風力エネルギー利用の現状と展望 特集にあたって

摘要

20世紀から持ち越した，人類最大の課題のひとつが地球温暖化問題である．特に2018年には国内外で，激甚と形容される異常気象が頻発したが，この多くは地球温暖化問題，特に海洋の温度上昇が原因と見られている．この課題の解決には，再生可能エネルギーの導入が期待されており，特に欧州ではこの10年以上，石炭火力発電も石油火力発電も原子力発電も全く設置されておらず，天然ガス火力発電も，ロシアからの天然ガス輸入についての安全保障リスクが顕在化している．したがって，エネルギー資源を輸入に頼る国々は再生可能エネルギーの導入にきわめて熱心である．近年，欧州の新規電源の20%が風力発電となっている．世界的にも風力発電導入量の急進展ぶりが目立っているが，2017年は10月に，世界の風力発電の累積導入量が500GWを超えるというエポックメーキングな年となった．1GW（ギガワット）＝100万kWであり，ほぼ原発1基分に相当することから，2018年末時点では，561GW超つまり原発560基分以上の風車が世界中で回っているのである．もっとも，発電量は設備利用率を考えなければならないが，原発は約70%，風力発電は約30%（洋上風力は35%）である．図1に世界の風力発電の累積導入量と洋上風力導入量を示している．