超伝導応用技術に使われる鉄系構造材料（第3回）：素粒子加速器－極低温用強磁性特殊純鉄

摘要

素粒子加速器向け超伝導磁石用新鉄系構造材料「極低温用強磁性特殊純鉄」を開発した．ポイントは従来の商用純鉄と比べて，保磁力の大幅な低減とヨークラミネートの精密打抜き性のため強度（降伏応力）の確保という相反する特性を具備させたことにある．これを実現するには，炭素量をシングルppm付近まで低減し，窒素を20ppm以下にして調質圧延処理の実施が最善であることを見出した．超伝導磁石に搭載してクエンチテストを行い，良好な結果を得た．BNL-RHICプロジェクトに全面採用され，CERN-LHCプロジェクトやその他にも用いられて，所要の素粒子衝突実験が進められている．次回は核融合発電炉向け極低温用オーステナイト系ステンレス鋼の開発について述べる．