日本における連続鋳造鋳片の介在物低減の技術史－ブリキDI缶用連鋳片の場合－（前編）

摘要

戦後の日本鉄鋼業では，図1のように1965年頃から製鋼工程の連続鋳造（Continuous casting：以降CCと記述）による鋳片の製造が拡大し，1975年頃から脱ガス処理も増加し，鋼材の大量生産が可能となってきた．一方，CC鋳片中に含まれる非金属介在物は，圧延後の鋼材製品の表面欠陥を発生させると同時に，厚板や型鋼等の厚物製品では超音波探傷欠陥，薄板製品では加工時に割れ等の内部欠陥も発生させることになり，品質問題の大きな原因となった．特に飲料用の深絞り缶（Drawing and Ironing Can：以降DI缶で記述する）の製造に適用されるブリキ薄鋼板では，加工時の厚みと介在物の径が肉迫してきた（後述の図3参照）ので割れや焼き付き等のトラブルが生じ介在物の小型化と個数の大幅な減少が要求された．対応策として国内の製鉄会社は，DI缶用のブリキ薄鋼板に供するCC鋳片の高清浄度化技術の開発を集中的に進めた．