現場の熱処理学(25)（最終回）：鉄鋼の表面硬化

摘要

処理品を各種棚化物の存在中で加熱し，最表面に極めて硬質なFeB (HV1700～2000)，Fe{sub}2B (HV1400～1600)の鉄棚化物を100μm以下の深さに生成させる表面硬化法を浸棚あるいはボロナイジングと呼ぶ．この方法は古くから知られていたが，処理温度が800～1000°Cと高く非硬化部との硬度勾配が急なうえ，硬化層が極めて硬く脆く研削が不可能なことが原因となって，いわゆる“seeds（技術）ありてneeds（需要）なし”という状態で応用例が極めて乏しかった．最近，アルミ合金鋳物との摩擦における相性が良く，小型自動車に搭載するエアコンのコンプレッサーのベーン(vein)に施され脚光を浴びつつあるという．