省資源型二相ステンレス鋼の引張特性におよばす温度とひずみ速度の影響

摘要

三相ステンレス鋼は，フェライト（α）相とオーステナイト（γ）相が約1：1の組織からなり，優れた機械的特性と耐腐食性を示す鉄鋼材料として広く用いられている。現在では，0.2mass％前後の窒素（N）量を含む，いわゆる第二世代のこ相ステンレス鋼が広く普及し，大きく分けると標準二相ステンレス鋼，スーパー二相ステンレス鋼，省資源型二相ステンレス鋼の3種類に分類できる。NiとMo量が少なく，NとMn量の多い省資源型二相ステンレスについては，破壊執性や熱処理による窒化物の析出などについての報告があり，γ相の加工誘起変態挙動を利用した機械的特性の向上についても研究が行われている。HeITera らは，Fe－19.9Cr－0.42Ni－0.16N－4.79Mn－0.11C－0.46Cu－0.35Si鋼よりαとγ体積率がぞれぞれ37％，63％の二柏ステンレス鋼を作製した。この材料を用いて常温，ひずみ速度8×10~(-1)s~(-1)にて引張試験した結果は，引張強さが1GPa以上全伸び60％以上の優れた特性を示し，加工硬化挙動や変形を加えた試料の組織観察結果より加工誘起マルテンサイト変態が起こっていることを明らかにした。