新しい蒸留塔（HIDiC）のしくみ

摘要

化学産業は鉄鋼業,製紙業，セメント業と並ぶエネルギー多消費産業の一つであり，化学産業における省エネルギーの達成度合いは，わが国が京都議定書の目標を達成できるかどうかの成否に大きな影響を与える。 しかしながらオイルショック時をはじめ従前より徹底した省エネルギー対策を実現しており，比較的達成が容易な対策については既に実行済みの状況である。 従ってさらなる省エネルギーを実現し，CO_2の排出抑制を図るためには,抜本的な技術的ブレークスルーが不可欠となる。 内部熱交換型蒸留塔（Heat Integrated Distiliation Column，略称HIDiC）は化学産業の全熱使用量の約40％を消費する蒸留プロセスをターゲットとして大幅な省エネルギー化を目的とした新技術である。 通常の蒸留塔は基本的には塔頂に設置されたコンデンサ，塔底に設置されたリボイラで冷却·加熱を集中的に行っており，この事実が蒸留プロセスのエネルギー多消費という特徴の原因となっている。もし蒸留塔の原料供給部分より上部（濃縮部と呼ばれる）での高さ方向に沿っての連続的な冷却とぅ原料供給部分より下部（回収部と呼ばれる）での連続的な加熱を行うならば，大幅な省エネルギー化が期待できることが熱力学的に証明されている。 さらに，濃縮部の冷却で取り除かれた熱を回収部への加熱に直接用いることができれば，外部の熱源なしで蒸留を行えることになる。