疲労損傷中の純銅における非線形超音波特性の変化：EMATによる非線形超音波スぺクトロスコピー

摘要

金属の疲労破壊に対し，非接触の超音波探触子EMATと非線形超音波スペクトロスコピー法を組み合わせたNNRUS法を提案し，疲労損傷中の純銅試験片内部の超音波特性の変化を測定し以下のようなことが明らかになった。1）EMATを組み合わせたNNRUSにより，疲労損傷中の非線形超音波量の高精度な計測が可能になった。2）疲労損傷中にNNRUSで計測された純銅材料の非線形超音波量は，疲労寿命の90％付近でピークを示した，超音波減衰も同様な変化を示した。3）TEMによる組織観察の結果，NNRUSによる非線形超音波量は，転位組織の変化に起因し，超音波減衰と相関関係があることが初めて確認された。4）この超音波挙動は疲労損傷による金属材料の疲労余寿命評価において，余寿命予測の新たな指標となる可能性がある。今後，これらの超音波挙動の発生と，金属材料の内部組織の変化を対応させた組織観察を詳細に行うことで，疲労余寿命予測の新たな手法の開発につながると考える。