長期供用下の石油精製圧力容器の脆化現象と補修溶接性に関する研究/第2報 母材/ステンレス鋼オーバーレイ溶接金属境界部の脆化挙動

摘要

石油精製圧力容器構造材料の母材／オーバーレイ溶接金属境界部の熱処理,水素曝露による脆化度を定量的に把撞することを目的に，境界部に切欠を挿入した丸棒引張試験を行い，引張特性と割れの伝播経路の観察を行った。 本研究において得られた結果を以下に要約する。 (1)母材，オーバーレイ溶接金属部の水素分析の結果，水素曝露の温度，水素分圧が高くなるに従って高い水素固溶量を示すことが確認された。 また母材2．25Cr-1Mo鋼ではSievertsの法則に基づく計算値に対して測定値は全体的に低く,オーバーレイ溶接金属部では高い傾向を示した。 （2)切欠引張試験の結果，熱処理時のテンパーパラメータの増加に従って引張強度,破断延性は低下した。 またオートクレーブ装置を用いた水素曝露によっても引張強度,破断延性は低下し，曝露温度，水素分圧が上昇するに従って強度および延性はより顕著に低下する傾向が認められた。 （3）破断後の破面および断面観察の結果，水素曝露なしでは破壊はオーバーレイ溶接金属部のげ相を縫って進展する様相が観察された。 また水素曝露後は母材／オーバーレイ溶接金属境界部の炭化物層からオーバーレイ溶接金属の粗大結晶粒界に沿って破壊が進展している様相が観察された。