肺結核治療のエタンブト一ル投与で発症し失明に至ったLeber遺伝性視神経症の1例

摘要

59歳男性.肺結核症と診断され，エタンプ卜一ル(ethambutol:EB)を含む治療を副作用なく 6ケ 月間で完了した.3ヶ月後に視力低下を認め，その後2ヶ月間で急速に進行し，ほぼ失明した.家族に Leber遺伝性視神経症(Leber's hereditary optic neuropathy ： LHON)患者が3人いることが判明し，遺伝 子検索により特異的なミ卜コンドリアDNA変異を確認しLHONと診断した.LHONは母系遺伝形式をとる， 網膜神経節細胞の特異的変性をきたし，急性ないし亜急性に視力低下をきたす疾患である.LHONは通常 若年発症であるが本症例は中高年での発症であり，過去の8例の報告例と同様にもともとミ卜コンドリア の異常があつたが発症せず，EB投与が発症の契機となったと推測された.EBは抗酸菌治療に頻用されて おり，投与に際して眼疾患の家族歷聴取が重要であると考える.