Quality of lifeを指標とした筋萎縮性側索硬化症患者に対する鍼治療の一症例

摘要

【目的】筋萎縮性側索硬化症は進行性の神経難病であり、根本的な治療はなく進行の過程では患者のQOLの改善が重要であるとされる。今回、進行過程のALS患者に対し鍼 治療を一定期間継続した結果、QOLの維持?向上が示された症例を経験したので報告す る。【症例】51歳女性。主訴：頸肩部、腰部および足背部の痛み。X年2月に精査の結果ALS と診断。初診時所見：身長158cm、体重46kg。腱反射正常、上肢?下肢MMT4、感覚障 害（-）、軽度の構音障害、日常生活では歩行時に力一卜を利用していた。仕事は1日8 時間のPG入力を週5日間。症状の緩和を目的に鍼治療開始した。薬歴：リルゾ一ル、ェ ダラボン。鍼治療は再現性の圧痛がある天柱（BL10)、板状筋部、肩外兪（SI14)、膏肓 (BL43)、脊柱起立筋部、中足骨間部に鍼通電療法または置鍼を実施した。評価はHRQOL であるSF-36を用いた。【結果】初診時と比較し6診目ではGH ：全体的健康感（20->52)、 MF:心の健康（35-> 50)へと得点が向上した。嗨下が少し困難になってきたと訴え始めた20診目においても、 BP ：身体の痛み（52->74)、 VT:活力（12.5->25)と得点の向上が示された。41診目で は身体症状が進み四肢優位の筋萎縮（上肢?下肢MMT2)や構音障害が著明にみられる ようになつたが8つの下位尺度全てにおいての得点は初診時と比較して向上した。【考察?まとめ】神経難病患者の多くは症状の進行とともにQOLの低下が予測される。 今回、一定期間鍼治療を継続した症例のSF-36での評価において、患者のQOLは維持-向上したことが示された。これは铖治療により身体的な痛みや苦痛を軽減させたことで、 心身双方の健康感の向上に寄与したものと考える。長期の療養が必要とされる神経難病患者への鍼治療はQOLの維持?向上に関与する可能性が示唆された。