ライフサイエンス分野における イノベーション創出拠点形成マネジメン卜

摘要

わが国ァカデミアにおける橋渡し研究（TR)の基盤整備は，文部科学省のイニシアチブによって進められてきた. 国がはじめて本格的にTRに投資したのは平成16年度に始まった「がhトランスレ一ショナル.リサーチ事業」 であり，同事業を進める中で目標管理と進埗管理の重要性が浸透し，ァカデミアにおけるTRの推進·管理法の 原型が確立した.また，同事業の成果と教訓に基づいて，国内にTRの拠点を形成することを目的に始まったの が「橋渡し研究支援推進プログラム」である.同プログラムには全国から7か所の拠点が参加し，各拠点に対し， TRの実施に必要な基盤を整備するとともに，薬事法下に治験を2件以上開始することが求められた.同プログラ ムの成果として，わが国におけるTRの拠点形成がほぼ完了し，ァカデミアのR&Dパイプラインが稼働し始めた と言ってよい.それを更に発展させるために始まったのが「橋渡し研究加速ネッ卜ワークプログラム」である. 同プログラムでは，恒久的なTR拠点を確立することが目的に掲げられ，各拠点には，新規シ一ズ3件以上に関 する医師主導治験の開始やネットワークを通じた実用化の加速等が求められている.一方，厚生労働省では，早 期·探索的臨床試験拠点と臨床研究中核病院の整備を進めており，両省の事業は平成26年度から「革新的医療技 術創出拠点プロジェク卜」として統合されつつある.これら一連の拠点整備事業を通じてァカデミアのR&Dパイ プラインが着実に稼働し，薬事承認を取得するシーズが順次出始めている.今後は，（独）日本医療研究開発機構 の施策の下，厳格なPDCAマネジメン卜を通じてァカデミア発シ一ズの一元'一貫管理を実現することで，わが 国は強力な医療ィノベーション創出国家になるであろう.