高圧下における遷移金属酸化物の単結晶育成

摘要

固体圧を用いた単結晶育成が難しい理由として，高温高圧の極限条件を長時間安定に保持することの難しさ，試料容積の制限などの技術的課題が挙げられる。さらに，結晶の融解や成長の過程を直接観察することが出来ず，育成の最適条件の絞り込みが難しいことが大きな問題である。 そこで我々は，放射光X線を用いた高圧下粉末X線回折実験によって高圧下での反応過程を直接観察し，それにより得られる状態図的情報を基に遷移金属酸化物の高圧下単結晶育成を試みた。 最近では1mm程度の大きさの単結晶でも各種物性測定が十分に行えるようになっているので，我々の有する高圧合成装置の限られたスペースでも目的に叶ったサイズの単結晶試料を作製することが可能となった。 本稿ではその研究手法及び結果の例を紹介する。