高圧合成法を用いた新しい遷移金属酸化物の探索と単結晶育成

摘要

高圧合成法は新物質探索の有用な手段で，我々のグループではこの10年間に，多くの特徴ある高温超伝導体や低次元磁性体を発見してきた．圧力下では一般に高密度，高配位の構造が安定化される．例えばFig.1（a）の常圧相SrCuO{sub}2を3GPa 7000C程度の条件で高圧処理すると，Fig.1（b）に示す，いわゆる無限層構造が得られる．ここではCuO{sub}2面と，Sr{sup}(2+)のみからなる面が交互に積層しており，2価のSrイオンを一部3価の希土類イオンで置換することで，乃型の超伝導体（T{sub}C＝43K）が得られる．また，SrCuO{sub}2にCuOを加えてSr{sup}(2+)とCu{sup}(2+)の比を調節し，少し高い圧力と温度で処理すると，今度はSrCu{sub}2O{sub}3，Sr{sub}2Cu{sub}3O{sub}5という新しい化合物が得られる．これらも無限層SrCuO{sub}2と同じくSr面とCu-O面から成る積層構造を持っているが，そのCu{sub}2O{sub}3面とCu{sub}3O{sub}5面ではFig.2（a），（b）に示すように，Cu{sup}(2+)が梯子状に並んでいる．