スクッテルダイト化合物の高圧合成と物性－新重希土類スクッテルダイトリン化物，LnT{sub}4P{sub}12 (Ln＝heavy lanthanide, Y; T＝Fe, Ru, Os)の高圧合成と電気的，磁気的性質

摘要

スクッテルダイト化合物の化学式の一般形は，2成分系のTX{sub}3（T＝遷移金属，X＝P，As，Sb）と3成分系の充填スクッテルダイト化合物，MT{sub}4X{sub}12（M＝アルカリ土類，ランクニド，アクチニド元素）で記述できる。 2成分系のTにはNi，Co，Rh，Irなどが，3成分系ではFe，Ru，Osなどが入る。 このようにスクッテルダイト化合物は構成元素の組み合わせにより，きわめて多くの化合物が合成できる。 また2成分系ではM原子を欠いているため，そこに種々の元素をドープすることも可能である。 それ故，今後更なる新物質が開発される可能性の高い物質群である。 Mがランクニド元素で特に軽希土類(La-Eu)の場合，物性は詳しく調べられ，超伝導，半導体，金属－絶縁体転移，磁気転移，価数揺動，重い電子系などきわめて多様な現象が見出されている。 また熱電変換材料など応用の立場からも注目される興味深い物質系である。 これらのスクッテルダイト化合物の性質はSalesによりまとめられている。 軽希土類元素のスクッテルダイト化合物はフラックス法でも容易に合成できるが，重希土類(Gd-Lu)の場合はフラックス法では極めて難しく，主に高圧合成法が使われる。 我々は高温高圧下で，重希土類を含む新スクッテルダイトリン化物LnT{sub}4P{sub}12（Ln＝重希土類，Y；T＝Fe，Ru，Os）を合成し，これらの電気的，磁気的性質を研究した。