川井式高圧装置を用いたスクッテルダイト化合物の高圧合成と物性

摘要

川井式高圧セルを用いた高温高圧合成によって，14族元素を骨格に含む置換型充填スクッテルダイトの合成に成功した。 この結果は，系を安定化する電子数に注意すれば，スクッテルダイトの15族元素を，他の族の元素によって置換することが十分に可能であることを示しており，これまで主にゲスト原子（希土類イオン）と遷移金属元素の組み合わせの中で新物質探索が行われていた充填スクッテルダイトの化学に，新しい可能性が付け加わったものと考えられる。 最後に，骨格置換型スクッテルダイトに見られる欠陥の可能性について述べる。 LnRh{sub}4Sb{sub}9Ge{sub}3，Ln＝La，Ce，Pr，and Ndの各充填スクッテルダイトは，EPMAによる組成分析の結果，いずれも遷移金属サイトが一部欠損している可能性が高いことが明らかになった。 これまで希土類イオンの充填率には注意が払われていたが，それ以外のサイトについて欠陥の有無を議論した報告はほとhどない。今後は骨格側の原子についても注意深くその組成を確認する必要があると思われる。