希土類元素を含む遷移金属化合物の合成、構造および磁性

摘要

希土類および遷移金属を含む酸化物またはカルコゲナイドの合成および電気·磁気的性質をはじめとする物性評価を行った。金属間化合物の場合、一般に伝導電子が磁気的相互作用の担い手となり、長距離的な相互作用が働く。一方で、今回取りあげた化合物はおもにイオン性結晶で、その多くは絶縁体であった。このような化合物では、希土類あるいは遷移金属イオンに隣接する酸化物イオンや硫化物イオンといったアニオンを介した短距離的な弱い相互作用しか働かず、磁気秩序を示す場合には、その転移温度は低くなる。しかしながら、ダブルベロブスカイトではBサイトに希土類元素と4d,5d遷移金属を共存させることで、酸化物としては極めて高い温度で希土類イオンが磁気秩序を示した。さらには、酸化物としては非常に珍しい価数揺動の発見にも成功している。また、幾何学的にプラストレー卜した磁気的相互作用をもつ化合物では、遷移金属の磁気モーメントの振舞いを4f電子の特性が制御し、フラストレーションをときには抑制し、ときには助長すること等も分かってきた。このように、希土類元素の4f電子間に働く相互作用の担い手として4d,5d遷移金属を用いることで、従来の3d遷移金属酸化物では見られなかった、様々な新奇な4f電子挙動を示すことが明らかになってきた。これらの成果は基礎研究として興味が持たれるところであるが、構造と物性の相関について基礎的データを蓄積していくことは、材料設計の指針を構築していくことにもなり、新たな機能性材料の探索$$発見にも展開していけるものと考えている。