臨床医学の教育及び硏究における死体解剖のガイドライン 日本外科学会?日本解剖学会

摘要

外科手術に対する医療安全の見地から，遺体を用いた手術手技実習が海外で行われている.我が国の現 行法でも，死体解剖保存法において医学（歯学を含む，以下同じ）の教育又は研究を目的とした解剖につ いては，所定の要件の下で実施できることとされている.しかし，外科手術手技等の教育及び研究は，死 体解剖保存法における「解剖」の枠内であるかの基準がなく，広く普及し，医療安全に貢献するには至ら ない現状である.本ガイドラインの目的は，遺体を用いた手術手技研修の社会的正当性を確保するための ルールと考え方を示すとともに，実施に際して遵守すべき要項を提示し，現行法上においても，このガイ ドラインに示すような手続とルールの下で行われる遺体を用いた手術手技研修については，適法に施行さ れることを明確にし確認するところにある.なぜなら刑法190条の死体損壊罪は，「社会的に見て正当な」 遺体の使用を罰するものではないからである.