膵全摘術：臓器温存（従来術式と十二指腸?脾温存術式との比較）

摘要

臓器温存膵全摘術には十二指腸温存時に胆管を温存するかしないか，膵臓を温存するかしないかで4通りのバリエーションが考えられ，十二指腸温存膵頭切除術と膵臓温存膵体尾部切除術の二つの術式を同時に行うことに等しい。これらの術式の膵腫瘍に対する適応は，臓器温存の有用性と膵腫瘍の根治性を両立することが前提となる。膵頭全摘の場合は胆管からVater乳頭部は合併切除となり，胆管を温存する場合は膵頭亜全摘となること，脾臓温存する際に脾動静脈温存できない場合ではある一定の頻度で脾梗塞などの合併症があることなどを理解し，術式に対する十分な配慮が必要となる。臓器温存の適応と有用性に関するェビデンスは十分ではないが，近年の腹腔鏡手術やロボット手術の普及もあって着実に報告が積み上げられてきている。本稿では，膵腫瘍に対する臓器温存膵全摘の報告と，十二指腸温存膵頭切除術と脾臓温存膵体尾部切除術の術式解説と温存の有用性について概説した。