縦隔嚢胞18例の臨床病理学的検討 CTおよびMRI検査の有用性について

摘要

今回,当科で経験した先天性縦隔嚢胞18例について,その術前診断におけるCTおよびMRI検査の役割について検討を行った。 対象は組織学的に先天性縦隔嚢胞と診断した18例(気管支嚢胞4例,心膜嚢胞5例,胸腺嚢胞9例)である。 自覚症状では18例中15例(83.3%)が無症状であり,有症状3例はいずれも胸腺嚢胞症例であり,周囲臓器の圧排による左頸部痛と呼吸困難を認めた2例および胸腔内穿破による左背部痛を呈した1例であった。 嚢胞内貯留液およびMRI検査所見では,気管支嚢胞の嚢胞内容液は全例粘稠,高蛋白であり,またT1強調像で高信号を示した。 心膜嚢胞は,全例黄色·漿液性の嚢胞液で,T2強調像で高信号を呈した。 またT1強調像は1例を除き低信号を呈した。 胸腺嚢胞では内容液が茶褐色であった1例を除きT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈した。 以上より,先天性縦隔嚢胞におけるMRI検査は,多方向表示が可能であり胸腔鏡などによる手術の術前検査として,その進展範囲の評価,術式決定上有用であると考えられた。 また,軟部組織コントラスト分解能に優れていることやT1強調像により出血や蛋白濃度上昇などの嚢胞内容液の性状がある程度推測可能であることから,CTでは充実性腫瘤との鑑別が困難な症例や気管支嚢胞と他の嚢胞との鑑別などに有用であると考えられた。