実験的肺高血圧症における肺循環系に対するアムリノンの選択的作用 ミルリノンおよびオルプリノンとの比較から

摘要

近年，肺高血圧症を合併した急性心不全，開心術後や心移植待機患者に合併した肺血管抵抗上昇による肺高血圧症に対するphosphodiesteraseⅢ阻害剤（PDEⅢ阻害剤）の有用性が報告されている。現在PDEⅢ阻害剤はアムリノン，ミルリノン，オルプリノンが臨床使用されているが，基礎および臨床研究で肺高血圧症に対するこれら3剤の作用を比較した報告はない。そこで本研究においては，低酸素誘発イヌ肺高血圧症モデルを用い，PDEⅢ阻害剤3剤の肺循環および体循環に対する作用について検討した。 低酸素換気（吸入酸素濃度10％）により誘発された肺高血圧症に対し，アムリノン（100～3000mug/kg），ミルリノン（3～100mug/kg）およびオルプリノン（1～30mug/kg）を静脈内投与した。 肺動脈圧および大動脈圧に対しては，アムリノン，ミルリノンおよびオルプリノンは共に用量依存的に有意な（p＜0.05）低下作用を示した。 また，比較3剤ともに有意に（p＜0.05）肺血管抵抗および体血管抵抗を低下させた。 アムリノンは，体血管抵抗に比べ有意に（p＜0.05）強く肺血管抵抗を低下させ，肺血管に対する選択性を示した。 この選択的肺血管抵抗低下作用は，ミルリノン，オルプリノンでは認められなかった。 心係数に対しては比較3剤ともに増加作用を示したが，アムリノンでは用量依存的かつ顕著な増加作用が観察された。 以上の成績から，低酸素誘発肺高血圧症モデルにおいて，アムリノンは選択的肺血管抵抗低下作用を示したことから，臨床における肺高血圧症の管理において，ミルリノンやオルプリノンと比べて優れた心血管作用を示すと考えられる。