リンパ節転移様式に関わる術前因子の検討

摘要

＜はじめに＞当施設では術中に遠赤外線を用いて，肺表面にICGを注入し胸膜直下リンパ流の研究を行ってきた．100例中8例で肺表面から直接縦隔リンパ節へ流入するリンパ管を描出した．腫瘍から直接縦隔リンパ節へ転移をきたすいわゆるSkip転移のルートと考えられた．この転移様式は胸膜に沿ったリンパ流が関連していると考えられた．これらのskip N2が疑われる症例に対して，リンパ流のルートも一緒に切除するため，胸膜を含めたリンパ節郭清が有用であることが示唆される．そこでskip N2をきたす可能性がある症例を術前診断することは重要と考えられる．＜目的＞Skip N2症例と腫瘍から肺門リンパ節へ転移するルートと考えられるp-N1症例について臨床的?病理学的な特徴を検討し，リンパ節転移ルートの術前予見因子を明らかにすることを目的とした．＜対象＞2011年1月から2014年4月までに当院で行ったリンパ節郭清術を伴う根治的肺癌手術を施行した493例のうちp-skipN2 21例とp-N1 38例を対象とした．＜方法＞p-Skip N2とp-N1の臨床?病理学的特徴について後ろ向きに検討した．＜結果＞年齢?性別?Brinkmann index?組織型に差はなかった．病理学的に胸膜浸潤，リンパ管浸潤，開胸時胸水洗浄細胞診に有意差はなかった．Skip N2の15/21は左右上葉で，80%の症例は胸膜に接した充実性腫瘍であった．肺門型肺癌でもp-Skip N2はあったが，すべて胸膜に接していた．p-N1は21/38は左右下葉だった．Skip N2の中に上葉から気管分岐下リンパ節や下葉から上縦隔リンパ節のみに転移した症例があった．＜結語＞胸膜に接したあるいは近傍の充実成分の多い肺癌では，Skip N2である可能性を念頭に置き，リンパ流路である胸膜の合併切除を考慮すべきと考えられた．