当科における気管支形成術の実際―良好な吻合を完成させるための手技

摘要

【目的】本邦での気管支形成術は全肺外科手術の約1.2%と施行する機会は稀ではあるが，肺全摘術を回避する方法として呼吸器外科医にとっては習得必須な術式である．当術式において当科で心掛けていることは，1）末梢側断端は肺実質近傍で切離，2）膜様部は可能な限り温存，3）口径差はtelescope吻合にて調節，4）吻合部被覆は全例に施行，である．この方法により吻合部の血流を維持すると共に狭窄?捻転も回避し，良好な吻合が可能になると考えている．今回当科における気管支形成術の手術成績を検討し，本術式の安全性と妥当性を明らかにすることを目的とした．【対象と方法】2008年1月から2015年3月までに原発性肺癌に対して外科的切除を行った511例中，気管支形成を施行した14例（2.7%）を対象とした．吻合の方法は単結節縫合を基本としているが，最近では管状切除の際に最深部を連続縫合とするHybrid methodsも導入している．【結果】年齢中央値69（53-81）歳．術式は楔状切除5例（36%），管状切除9例（64%）であり，このうちextended sleeve lobectomyが5例（type C：4例，type D：1例）に施行されていた．平均手術時間は259.9分，平均出血量は211.4mlであった．呼吸器関連術後合併症は4例（28%）認め，このうち吻合部合併症は遅発性縫合不全1例のみであり，保存的治療で改善している．平均術後在院日数は14.1日であり，再手術例および在院死亡例は共に1例も認めなかった．【まとめ】当科における気管支形成術は吻合部合併症も少なく，現状では安全面において問題ないと考える．手術の実際としてビデオを供覧しつつ，吻合方法における当科の工夫やpit and fallsについても提示する．