T4局所浸潤肺癌（III期）症例に対する手術療法と術前導入療法の役割

摘要

（目的）T4局所浸潤肺癌（III期）症例に対する手術療法の役割と術前導入療法の有効性を検討した．（方法）1994年1月から2014年12月に当院にて手術を施行した原発性肺癌3125症例中，病理学的に隣接臓器浸潤が診断されたT4非小細胞肺癌（III期）50症例（1.5%）を対象とし後方視的に臨床経過を検討した．（結果）男性/女性：42/8人．年齢中央値62歳（36-81歳）．臨床的進行度はcT2N0：2例，cT2N1-2：7例，cT3N0：4例，cT3N1-2：5例，cT4N0：19例，cT4N1-2：13例であった．浸潤臓器は大血管18例，気管分岐部16例，左房13例，縦隔脂肪組織9例，食道5例，椎体3例（重複あり）であった．組織型は扁平上皮癌29例，腺癌15例，他7例で，術式は肺葉切除24例，肺全摘22例，その他4例で41例において完全切除を施行した．病理学的進行度はpStage3A/3B：34/16例で，術後生存期間中央値は29.9ヶ月で全摘症例（生存期間中央値：11.1ヶ月，p＜0.01），非完全切除症例（6.6ヶ月，p=0.04），pN1-2症例（22.0ヶ月，p=0.03）は有意に予後不良であった．17例に術前導入療法（化学放射線療法11例，化学療法6例）を施行し治療効果はSD：9例，PR：7例，PD：1例であった．術前導入療法施行症例における浸潤臓器は大血管8例，気管分岐部7例，縦隔脂肪組織3例，左房2例，食道2例，椎体2例（重複あり）であった．術式は肺葉切除9例，肺全摘5例，その他3例で14例において完全切除を施行した．術前導入療法施行症例の術後生存期間中央値は43.7ヶ月で有意差は認めないものの予後改善傾向を認めた．（まとめ）T4肺癌（III期）症例に対する外科治療ではリンパ節転移陰性症例を選択し全摘の回避および完全切除の追求が必要と考えられた．また術前導入療法については予後改善傾向が得られており施行可能症例については積極的に検討されるべきである．