Afatinib抵抗性の脳転移を有するEGFR変異陽性進行非小細胞肺癌に対してErlotinibが長期奏効した一例

摘要

症例は60歳女性．労作時息切れを契機に撮影された胸部X線検査にて両側肺のびまh性小粒状影を認めたため当院紹介受診．精査の結果，非小細胞肺癌T4N3M1b，StageIVと診断した．診断時のPET-CTにて肺，肝臓，骨，副腎に転移を認めたが頭部MRI検査では脳転移を認めなかった．遺伝子検索にてEGFR遺伝子G719S変異を認めたことからAfatinib（40mg/day）にて一次治療を開始した．治療開始2カ月後に下痢Grade3，皮疹Grade3のため30mg/dayに，3カ月後に下痢Grade2，爪囲炎Grade2のため20mg/dayに減量した．治療開始11カ月後に頭部CT検査にて多発脳転移が出現したため，PDと判定しAfatinibを中止した．全脳照射（30Gy/10fr）施行したが脳転移病変の縮小を認めず，全脳照射終了後にErlotinib（150mg/day）を開始した．Erlotinib投与開始後約3ヶ月で脳転移からの腫瘍出血を認め開頭血腫除去術が行われた．その際に採取した組織の一部より腫瘍細胞の残存を認めた．施術後にErlotinibを再開し脳転移病変の縮小を認めた．Erlotinib開始20ヵ月後に縦隔リンパ節と肺転移の増大を認めたためErlotinibは中止となったが，この時点においても脳転移巣は縮小したままであった．Afatinibが無効となった脳転移病変に対し，Erlotinibが有効である可能性を示唆する症例であり，両薬剤の髄膜移行率などについて若干の文献的考察を加えて報告する．