CPT-11関連肺障害における既存間質性肺疾患の影響についての後方視解析

摘要

背景：CPT-11は「間質性肺炎」への投与は禁忌とされているがその根拠は明確でなく，CPT-11関連肺障害（CPT-LI）と既存の間質性肺疾患（Ex-ILD）との関連について十分には評価されているとは言い難い．方法と対象：2005年9月から2014年7月までに当院でCPT-11が投与された246例中，投与前1年以内の胸部CTが評価可能であった210例を対象として，CPT-LIの発症について後ろ向きに検討した．Ex-ILDは，その存在，UIPらしさ，占拠面積を呼吸器専門医2名，放射線科医1名の独立した評価に基づいて評価した．結果：CPT-11は肺癌87例（非小細胞54例，小細胞33例），大腸癌75例，胃癌29例，その他19例に投与され，年齢は平均63±9歳，149例が併用投与であった．全210例中23例でEx-ILDが認められ，possible/definite UIPが20例であり，占拠面積は0-10%，10-25%，25-40%がそれぞれ8，13，2例であった．CPT-LIは6例（2.9%）で認められ，うち2例でEx-ILDが認められた．Ex-ILD合併，非合併時のCPT-LI発症率はそれぞれ8.7%,2.1%であり，ロジスティック解析ではEx-ILDはオッズ比4.36，p=0.101であった．そのほか，年齢，対象癌腫，併用抗癌剤の有無など調べ得た項目では有意な危険因子は確認できなかった．CPT-LI症例6例は全て無治療またはステロイド投与により後遺症なく軽快していた．結語：Ex-ILD合併例では非合併例に比べてCPT-LI発症率が高い傾向が見られたが，有意な危険因子とは確認できなかった．今後更なる症例集積と検討が必要と思われる．