化学療法薬剤投与の仕方：具体例，理論と実践

摘要

がh治療における化学療法薬剤には，以前から使用されている細胞障害性抗がh薬や特定の標的をターゲットとした分子標的治療薬がある．最近では新たな機序の免疫チェックポイント阻害薬も登場し，臨床現場ではこのように多種の薬剤が使用されている．多くの薬剤を効果的かつ安全に，さらに患者ニーズをふまえた上で適正に使用するためには，様々な工夫が必要である．　肺がh化学療法のKey drugであるシスプラチンを例として，その投与法の理論と実践について示す．シスプラチン投与時にはその腎障害が問題になり，予防のために大量の水分負荷が必要とされ，以前は入院で投与されることがほとhどであった．腎障害の主な機序は近位尿細管のトランスポーターを介した，血中タンパクに結合していないフリーのプラチナによる尿細管壊死とアポトーシスと言われている．低Mg状態では，トランスポーター（OCT2）のup regulationがおこり，フリーのプラチナが尿細管細胞に移行し，細胞障害を引き起こす．壊死が起こることで尿細管からのMgの排泄が促進され，これによってOCT2がup regulationし腎障害がさらに助長される．この発現機序をふまえMgを補充することで腎障害の予防ができることが臨床試験で示されている．OCT2は近位尿細管細胞に特異的に発現しているため，Mg補充は抗腫瘍効果に影響を与えない．Mg補充を行うことで大量に必要とされているハイドレーションを減らすことができ，外来治療も可能となり，結果的に患者のニーズにも合わせた治療へつなげることができる．