70歳以上の高齢者原発性非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療の当院における後方視的検討

摘要

体幹部定位放射線治療（stereotactic body radiotherapy：SBRT）は肺野型の5cm以内の孤立性腫瘍に対し施行される．実臨床においては合併症や全身状態不良，高齢のため手術に耐えられない症例に対し行われることが多く，効果が限定的であったり，安全性を損ねている可能性がある．2010年4月から2014年9月までに当院でSBRTを施行した70歳以上の非小細胞肺癌22例について，後方視的に探索し高齢者に対するSBRTの安全性および有効性について検討した．　患者背景は年齢の中央値が80歳（71-86歳），男女比は男性11例，女性11例，全身状態はperformance status0が10例，1が11例で，組織型は腺癌12例，扁平上皮癌4例，大細胞神経内分泌腫瘍1例，組織型不明5例，病期はstageIA 16例，IB 6例であった．SBRTの理由は低肺機能7例，低心機能2例，肝障害1例，高齢3例のため手術適応がないためで，7名で患者希望，2例は詳細不明であった．全例で補助化学療法は行われておらず，再発率は18.2%（4例）でそのうち局所再発は2例，原発巣以外での再発は2例であり，局所制御率は90.9%であった．治療を有する有害事象は1例でgrade2の放射線肺臓炎を認めたのみで，皮膚障害や骨髄抑制などの有害事象も認めなかった．　SBRTは手術適応のない，stageI期の高齢者原発性非小細胞肺癌に対して忍容性が高く安全に施行可能で，腫瘍の制御効果も良好であり，有効な治療方針と考えられた．