ヒストンアセテル化酵素およびヒストン脱アセチル化酵素を介したクロマチン機能活性制御機構

摘要

ヒストンとDNAとの相互作用により生み出されるヌクレオソームは,遺伝子発現の際に,さまさまな化学反応あるいは相互作用により,何らかの構造変換を伴いながら可逆的あるいは不可逆的にその活性が制御される.ヒストンのリジン残茎への化学修飾は,遺伝子発現のON/OFFに寄与することが古くから知られてきた.最近になって,ヒストンアセチル化酵素,ヒストン脱アセチル化酵素が種々単離され,それらの酵素の性質が明らかにされるに従って,転写活性化·不活性化反応にかかわるさまさまな分子間相互作用が判明してきた.本稿では,ヒストンアセチル化酵素·ヒストン脱アセチル化酵素に関する知見を解説する.独自に単離した酵素·反応·反応系を用いて進めているのは,残念ながら日本では筆者のグループに限られており,米国を中心とした互いに似通った先を争う研究と一線を画して,独創的な考え·研究をどのように発展させていくか,海外の研究の実状を知らずに評価してしまう若い学生た引こどれだけそれを示していけるかが,米国での研究環境を捨て,和製研究を発表するために日本に帰国した筆者の課題であると考えている.