経口強心薬ピモベンダンの投与が入院回避あるいは早期退院に有用であつた心不全の3例-し不全診療の新たな地平に向けて-

摘要

経口強心薬ピモべンダンの投与が入院回避あるいは早期退院に有用であつた心不全症例3例を 呈示した。【症例1】は85歳女性。労作時呼吸困難を主訴に来院した拡張型心筋症+僧帽弁閉 鎖不全（MR)による慢性心不全で，外来でピモベンダン（1.25 mg 1x)使用下にカルベジロー ルを開始し，外来での対応が可能であった。【症例2】は89歳女性。咳と夜間発作性呼吸困難 を主訴に入院となる。腎硬化症，陳旧性心筋梗塞，虚血性MRによる慢性心不全急性増悪に対 し，認知症予防の観点から早期退院を企図し，3遮断薬，ACE阻害薬に加え，利尿薬，ピモべ ンダン（1.25 mg 1x)を開始，2週間での退院が可能となった。【症例3】は49歳男性。慢性 心不全急性増悪+低拍出量性症候群で，ドブタミン，hANP,硝酸イソソルビド，フロセミド静 注にて加療。MRIよりアミロイドーシスが疑われた。ドブタミン減量後のカルベジロール導入 にあたり，ピモベンダン（1.25mg 1x)を開始し，円滑なコントロールが可能であった。近年，わが国でも診断群分類（DPC ； Diagnosis Procedure Combination)包括評価の導入が進 められているが，心不全患者の"超"高齢化に伴うADL低下?認知症予防の観点からも入院回 避あるいは早期退院への社会的要請は強い。心不全診療の高い質を維持しつつそれを実現するに 当たり，ピモベンダンが果たし得る役割は大きなものであると考える。