骨盤内リンパ節摘出術後下肢リンパ浮腫に対する硬膜外ブロック法および腰部交感神経節ブロック法の効果

摘要

骨盤内リンパ節摘出術後の症例や，その後の骨盤内再発症例に生じたリンパ浮腫に対し入院のうえ，第2/第3腰椎から0.5％lidocaineを用い時間2.1mlで5日～7日間持続硬膜外ブロックを行った．次に持続硬膜外ブロックによって大腿周囲の著明な縮小を認め，さらに追加ブロックの同意の得られた症例に対し，腰部交感神経節ブロックを行った．1.検討症例は10例で，子宮頸癌8例，卵巣癌2例であり，このなかの4例には骨盤内再発を認めた．2.治療開始までの間隔は4カ月以内が6例，約3年が2例，10年以上が2例であった．3.効果判定は，症状の変化と大腿周囲径測定値により行った．大腿周囲径測定値が最大5cm以上縮小を著効，2cm～5cm縮小を有効，0～2cmを無効とした．4.著効例は10例中6例（60％）であり，いずれも発症から治療開始4カ月以内であった．また有効例は発症から治療開始までに36カ月，38カ月，16年の3例（30％）であり，無効例は20年の1例であった．5.このなかで著効6例中4例，有効3例中1例の計5例に腰部交感神経節ブロックを行った．著効6例と有効に腰部交感神経節ブロックを追加した1例を合わせた7例は長期的に効果が持続している．6.本法の作用機序は，浮腫による交感神経の過剰刺激を減少させ，また同時に糸田動脈と肺静脈双方の圧低下を生じさせ結果的に濾過作用を高めることによると考えられる．本法は骨盤内リンパ節摘出術後の症例に生じた下肢リンパ浮腫に非常に有効であり，また比較的簡便でかつ特記すべき副作用も認められないため画期的な治療法と考えられる．