門脈臍部に接し局所遺残再発した肝細胞癌に対し肝血流遮断下ラジオ波焼灼療法を施行した1例

摘要

ラジオ波焼灼療法(Radio frequency ablation:RFA)後に,門脈血の冷却効果によると考えられる局所遺残再発を来した肝細胞癌に対し,肝血流遮断下RFAが有効であった1例を報告する.症例は62歳,女性.1992年よりe抗原陽性のB型肝硬変と原発性胆汁性肝硬変の合併例として外来通院中であった.1999年8月,腹部造影CT検査にて肘左葉S3に直径22mmの腫瘍性病変を認めたため入院となった.精査の結果,肝細胞癌と診断し経皮的RFAを施行し退院した.RFA3カ月後より局所遺残再発が疑われ経過観察していたが,15カ月後の2000年12月に局所再発が明瞭となり再入院となった.外科的切除はChild-Pugh B,肝障害度Bの肝予備能から困難であり患者も強く拒否したため,脈管の冷却効果の軽減を目的として坦癌領域の肝血流を遮断してRFAを施行し十分な壊死範囲が得られた.その後現在まで3年間,局所再発を認めないが,グリソン鞘にまで焼灼が及hだ影響と考えられる末梢側の胆管拡張を認めた.肝血流遮断下RFAは焼灼範囲の拡大のみならず脈管による冷却効果の軽減に有用である可能性が示唆されたが,焼灼範囲のコントロールは困難であり,その適応は慎重に考慮すべきものと考えられる.