潰瘍性大腸炎の長期治療中にS状結腸膀胱瘻を契機に発見されたS状結腸原発悪性リンパ腫の1例

摘要

炎症性腸疾患に腸管膀胱瘻を合併することはしばし散見される.その原因のほとhどはCrohn病で漬瘍 性大腸炎はきわめて少ない.今回われわれは，潰瘍性 大腸炎の長期治療中にS状結腸膀胱瘻を契機に発見さ れたS状結腸原発悪性リンパ腫の1例を経験したので 若干の文献的考察を加えて報告する.患者：73歳，男性。 主訴：気尿，発熱。既往歴：潰瘍性大腸炎，高血圧，糖尿病，不整脈。 現病歴：当院消化器内科にて潰瘍性大腸炎に対し16 年間投薬治療中，2013年9月の下部消化管内視鏡検査 にてS状結腸に全周性の潰瘍性病変と黒色の壊死性物 質を伴った腫瘤を認めた(Fig. 1A). S状結腸癌が疑 われ，2.度生検が施行されたがいずれも確定診断にはいたらなかった.今後の治療方針を検討していたところ2013年10月，気尿および発熱を認め当科紹介受診と なった.膀胱鏡では膀胱後壁に瘻孔を認め(Fig. 1B), CTにてS状結腸膀胱瘻と診断し(Fig. 2)，感染コン トロール目的に入院となった.