Heparin-induced thrombocytopenia (HIT)の発症により影響を受けたpreemptive kidney transplantationの1例

摘要

HIT (type-2)は，体内に投与されたheparinが血小板第4因子（PF4)と複合体を形成，これが抗原となつて形成された抗体（HIT抗体）によって引き起こされる病態である。HIT抗体は，血小板に作用して，血小板減少症を起こすと同時に，凝固系を亢進し，場合によっては全身の動静脈に塞栓症を起こさせることがあり，この場合，予後はきわめて不良とされる。われわれは，移植を目的として入院してきた慢性腎不全患者に対して透析導入を行い，HITによる血小板減少症を認めたため移植手術を延期，4力月後に手術して良好な結果を得た症例を経験した。多少の考察を加え，ここに報告する。