複雑系数理モデル学に基づくワイヤレスネットワークプロトコル構築

摘要

複雑系数理モデル学に基づく理論を通信ネットワークに応用する研究を紹介する．これまで，カオス理論や複雑ネットワーク理論などに基づく手法を，通信に応用する様々な研究が行われてきた．本稿では，最先端研究開発支援プログラム（FIRST）「複雑系数理モデル学の基礎理論とその分野横断的科学技術応用」（合原最先端数理モデルプロジェクト）の中で，「複雑系数理モデル学の工学応用研究」として進めている通信応用研究，雑音印加誘起同期現象を利用した同期方式，及び，ネットワーク最適化理論に基づいた厳密な最適化アルゴリズムについて述べる．独立の非線形リミットサイクル振動子は，共通のノイズを印加することにより，結合させなくても同期することが示されている．この理論に基づき，環境から得られる自然のデータのみを用いることで，無線ネットワークの同期が達成できることを，実データを用いた実験結果を示しながら説明する．次に，ネットワーク最適化理論による負荷分散最適化問題の厳密解法を紹介する．大規模なネットワークにおける問題に対しても，少ない計算量で厳密解を得られることを，実験結果を交えながら説明する．