レントゲン用X線管の高速起動を目的とした管内電荷状態のモデリングと制御方法に関する検討

摘要

現在，高齢化社会が進む日本において医療制度の充実化は重要な課題である。特に高齢患者の医療機関への通院負担を軽減するため，在宅医療を可能とする携帯型医療機器が必要となっている。また、昨年起きた東日本大震災ように身近な医療機関及び電力系統が麻痺した時、携帯型医療機器は多くの人命救助になくてはならない役割を果たす。レントゲン撮影の分野でも在宅医療をはじめとする出張医療用として，ポータブルタイプのX線発生装置が既に開発されている。本装置は，馬や犬といった動物のレントゲン撮影にも用いられ，医療機関に設置されている大型装置と同等の性能をもちながら，小型·軽量であることが要求される。X線発生装置に求められる性能は用途によっても様々であるが，共通して短時間の極めて安定な動作及び高速起動が要求される。これは，X線被爆量の低減や心臓など動く臓器の撮影ぶれを抑制するためである。動物のレントゲン撮影の場合も被写体の静止が困難であり，特に高速かつ安定した駆動が必要とされる。