メンテナンスフリーを実現するグリース技術：宇宙機器におけるグリース技術

摘要

宇宙機器用のグリースとしては，PFPE油(perfluoropolyethers)を基油とし，PTFE (polytetrafluoroethylene)を増ちよう剤としたフッ素グリースが有名である。 このフッ素グリースは，米国NASAのマーシヤル飛行センターにおいて数多くの試作グリースを評価し，選定されたものである。 国際宇宙ステーション計画に参加している日本の実験棟(Japanese Experiment Module)でも，大気環境と宇宙空間の真空環境を交互に経験するガイド，ローラ，軸受などの潤滑部品にフッ素グリースを使用している。 しかしながら，常に潤滑剤には，機器の小型化のための高荷重特性の向上，メンテナンスフリーのための長寿命化が要求される。 このような厳しい摺動条件に対してフッ素グリースも万能ではなく，PFPE油が摩擦部材のステンレス鋼と反応し，劣化してしまう。こうした中で合成炭化水素でありながら低蒸気圧特性，耐荷重特性に優れるMAC油(multiply-alkylated cyclopentanes)が登場した。本稿では，宇宙用グリース技術として，MACグリースをAPDMに適用するために実施した課題，性能評価について紹介する。